津軽びいどろを支える職人たちころんと手のひらに収まる、可愛らしい一輪挿しや箸置きは、多彩な色表現とデザインが魅力の『津軽びいどろ』の中でも人気のアイテムです。小ぶりなものは、ガラスを坩堝から巻き取り完成まで、職人一人の手によってすべてを手掛けられます。「ピンブロー」という技法で制作される一輪挿しなどを担当するのは女性職人が多く、小ぶりな作品のなかに繊細で美しい四季を、女性らしい感性で表現しているところが特長の一つです。北洋硝子では初となる、女性の青森県伝統工芸士となった舘山も、ピンブローを担う職人のひとりです。職人歴が25年を超える舘山は、ピンブローのほかにも、箸置きやオーナメントの作成に携わっています。ピンブローはまんまるのアイテムをつくることが多いのですが、真円をめざすのはとても難しく、ひと呼吸の狂いで軸がぶれてしまうことも。たとえば一輪挿しで軸がぶれると、草花の差し入れ口が斜めになってしまいます。ガラスを均一な厚みで膨らませ、中心を捉えた円にするためには、熟練の技術が必要となります。舘山のつくる作品は、同期入社の女性職人いわく「キチッと同じものをずっと作り続けることができる、まさに職人」。人気の高まりとともに生産量が増えているぶん、スピードを求められることもありますが、それでも品質を落とさずに同じものがつくれるというのは、熟練職人の証です。最近では若手の女性職人も増えてきていて、舘山は若手の育成にも力を入れています。伝統工芸士となっても毎日練習を積み、ガラス職人として自分の技術を磨き続けている舘山は、若手にとって憧れの存在です。「作り手にとっても『津軽びいどろ』の魅力は、やはり色数がたくさんあることです。他にはない色の合わせ方ができるので、色の使い方にも個性を活かせます。同じアイテムをつくっていても、職人によって色彩などに微妙な差が出るところも、手仕事ならではの面白さです。」そこで舘山にモットーをきいてみると、ガラスづくりのテーマは“愛着がわくように”なのだとか。「たくさんのガラスの中から毎日使いたくなるものを見つけて、もっとガラスを好きになっていただけたら嬉しいです」。人によって季節の感じ方が異なるように、同じアイテムでも赴きの違いを愉しみながら、感性がぴたりと合うひとつを見つけられる。それが『津軽びいどろ』の魅力なのだと思います。小さい頃に出会った、小さな花が入ったガラスのペーパーウェイトが忘れられず、好きなことを仕事に。2021年に青森県の伝統工芸士に認定される。私生活では二児の母。正確な技術で生産を支えつつ、若手職人の育成にも尽力している。北洋硝子株式会社舘山 美沙北洋硝子では初となる、女性の青森県伝統工芸士。先輩たちの背中を追って目標を叶えた、美しく正確な技術。若手の職人を育てつつ自己研鑽も忘れない、憧れの存在。職人たちのこだわり理想のガラスづくりに懸ける職人たちの想い。027
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